ベルナール・ビュッフェは、世代や美術経験を問わず、今も幅広い層に親しまれている作家です。
強い線と抑えた色調による独特の画面は一度見ると忘れがたく、「好きな人はずっと好き」ではないでしょうか。
日本国内では、ビュッフェの作品は
油彩・紙作品・版画といった複数のメディアが、現在も並行して流通しています。
ただし、それぞれは同じ「ビュッフェ作品」であっても、市場での位置づけや、査定の際に重視されるポイントは異なります。
この記事では、実際の流通状況や相談内容を踏まえながら、
ベルナール・ビュッフェの作品を美術商の視点から整理していきます。
作家紹介:ベルナール・ビュッフェ

https://ja.wikipedia.org/wiki/
ベルナール・ビュッフェ(1928–1999)は、戦後フランスを代表する画家の一人で、鋭い線と抑制された色彩による具象表現で知られています。
若くして注目を集め、戦後ヨーロッパ美術の中で独自の位置を築いた作家です。
人物・静物・風景といったモチーフは明確でありながら、感情や物語を前面に押し出すことはなく、線と構図によって画面に緊張感を生み出す作風が特徴です。
抽象でも写実でもないその表現は、生涯を通じて大きくぶれることなく、一貫したスタイルとして貫かれました。
日本では1950〜60年代以降、百貨店や画廊を通じて紹介が進み、油彩作品だけでなく版画作品も広く親しまれてきました。
現在では美術館収蔵作品が知られる一方で、版画を中心に多様な作品が市場でも流通しています。
日本で広く親しまれてきたビュッフェ。実はこういう理由がありました。
ベルナール・ビュッフェが日本で広く知られ、長く親しまれるようになったのは、
1950〜60年代、戦後から高度成長期にかけてのことでした。
戦後の記憶を引きずりながらも、前に進まざるを得なかった当時の日本。
明るい希望だけでも、完全な絶望でもない――
そんな張りつめた中間の感覚が、社会全体にありました。
ビュッフェの作品が放つ緊張感は、
この「希望と不安のあいだ」にあった日本人の感覚と、自然に重なったのです。

https://www.mutualart.com/Artwork/Sumo/218654CBA09FAC1222E03925F3AC6470
当時、日本に入ってきた西洋美術には、
- 抽象表現主義(難解に感じられた)
- ポップアート(軽く見えすぎた)
といった、極端な印象のものも少なくありませんでした。
その中でビュッフェは、
前衛でありながら具象であるという、その独特の位置によって、
日本の鑑賞者にとって親しまれました。
さらに、造形面での特徴も大きな要因があります。
- 線が主役であること
- 構図が明確であること
- 色数が抑えられていること
このため、油彩と版画のあいだで印象の差が比較的小さく、
版画であってもビュッフェ特有の緊張感が損なわれませんでした。
結果として、版画作品も
「複製だから弱いもの」ではなく、
きちんとした美術品として家庭に迎え入れられていきました。
版画作品は百貨店や画廊にとっても扱いやすく、
展覧会や常設展示が繰り返し行われることで、
ビュッフェは「特別でありながら身近な作家」として、日本に定着していったのです。
ベルナール・ビュッフェ作品──技法・メディア別に見る流通と評価
ベルナール・ビュッフェの作品は、
日本国内では複数のメディアが並行して流通していますが、
市場での扱われ方・相談の多さには、はっきりとした傾向があります。
版画(リトグラフ・ドライポイントなど)
現在、もっとも相談が多いのが版画作品です。
日本では長年にわたり、百貨店や画廊を通じて広く流通してきたため、
ご自宅に残っているケースも非常に多く見られます。
特に多く流通しているのは、
- リトグラフ(SORLIER番号が確認できる作品)
- エディション150前後の作品
- 1960〜80年代制作のシリーズ物
(パリ、ニューヨーク、ベニス、花・静物など)
といったものです。
ビュッフェは、線と構図を主軸に画面を構成する作家であるため、
版画であっても「ビュッフェらしさ」が失われにくいという特徴があります。

Bernard Buffet1968
Lithograph
https://artsandculture.google.com/asset/le-pont-neuf-bridge-paris-bernard-buffet/6QEXidXFJE3uzw?hl=en

https://www.mutualart.com/Artwork/Bouquet-of-yellow-tulips/270CA95D0B0A535F973B3B835336126F
版画作品は、
見た目だけでは判断しにくい専門的な確認ポイントが多い分野でもあります。
特に版画の場合、査定時に確認できると助かるのは、
- 技法(リトグラフ/ドライポイントなど)
- エディション番号(EA・HCを含む)
- サインの有無と位置(版上サインか、余白か)
- レゾネ番号(SORLIER番号など)
- 画廊・版元のシールや表記
- 額装の状態(額由来のヤケ・シミ・波打ちの有無)
といった点です。
ビュッフェは作風が一貫している作家であるため、版画であっても作品性がはっきりしており、
「版画だから評価できない」ということはありません。
「本画かどうか分からない」
「正規の版画なのか不安」
「状態の影響がどこまで評価に関わるのか分からない」
そうした場合は、無理にご自身で結論を出さず、
一度専門家に相談して整理することが、結果的にいちばんスムーズです。
直筆作品(油彩・紙作品・ミックストメディア)

ベルナール・ビュッフェの直筆作品には、
- 油彩作品
- 紙にミックストメディアによる作品
- 素描・ドローイングを含む紙作品
といった複数の形態がありますが、
いずれも評価軸が比較的はっきりしており、基本的には専門市場での取り扱いが前提となる領域です。
実際の流通データを見ても、
- 鑑定書が付属している
- サイン・タイトルが明確
- コンディションが比較的良好
といった条件がそろう作品については、
数百万円〜数千万円クラスで取引されている例が確認できます。
このクラスになると、
一般的な「買取相談」というよりも、
- 毎日オークション等への直接出品
- 専門市場での評価・競り
が前提になるケースがほとんどです。
価格形成において特に重要になるのは、
- 作品サイズ・制作年代
- 鑑定書の有無(発行元・発行時期)
- 来歴(購入先、旧蔵者、展覧会歴など)
といった情報です。
そのため、
「すでにオークション出品を想定している」
「市場に直接出したい」
というご相談が多く、版画の相談とはやや性格が異なります。
査定時に特に重視されるポイントとしては、
- 直筆であることを裏付ける要素(サイン、裏書、タイトル記載など)
- 鑑定書の有無
- コンディション(ヤケ、ヒビ、修復の有無)
- 来歴(画廊購入、旧コレクションなど)
が挙げられます。
鑑定書や来歴が明確な作品は評価が安定しやすく、
一方で情報が少ない場合は、慎重な見方になるのが実情です。
直筆作品についても、
専門的な内容を含めて対応していますので、状況に応じてご相談ください。
鑑定証・付属品・来歴について——査定時にあると助かる情報
ベルナール・ビュッフェの作品では、
- 鑑定書(発行者が確認できるもの)
- レゾネ掲載の有無(SORLIER番号など)
- 画廊・百貨店での購入履歴
- 額裏のラベルやシール類
といった情報が確認できると、
作品の整理や市場での位置づけが非常にスムーズになります。
「書類が揃っていない」
「何を持っているのか自分でも分からない」
という状態でも、まったく問題ありません。
版画1点からのご相談や、
「これはどのメディアにあたるのか?」という段階からでも、
専門家が状況を整理しながら、一つずつ確認していくことが可能です。
