棟方志功の作品の種類と価値とは?|板画・倭絵・書の市場評価と査定ポイント

棟方志功の作品は、どのように評価されているのでしょうか。

  • 「これはどの種類?」
  • 「本物かどうか分からない」
  • 「状態も良くないけど大丈夫?」
  • 「そもそも売れるの?」

この記事では、まず何を見ればいいのか/どこが評価の分かれ目なのか
美術商の実務的な視点から、順番に整理していきます。

目次

作家紹介:棟方志功

https://ja.wikipedia.org/

棟方志功(1903–1975)は、20世紀日本を代表する版画家・画家です。

1930年代に独自の表現として板画(木版画)を確立し、戦後は海外の国際展での評価を足がかりに国際的な地位を築きました。

1950年代には、スイスで開催された国際木版画展で優秀賞を受賞し、1955年のサンパウロ・ビエンナーレ(版画部門最高賞)や翌1956年のヴェネツィア・ビエンナーレで評価を重ね、「世界のムナカタ」としての立場を確立しています。

また、帰国後の1960年代以降にも国内外で評価が続き、日本政府から文化勲章を受章するなど、国内でも最高レベルの栄誉を得ています。

棟方志功の作品には、どんな種類がある?

棟方志功は制作点数が非常に多く、
板画・倭絵・書・陶芸など、制作領域も幅広い作家です。
さらに市場には、本人没後に原画などをもとに制作された版画作品(リトグラフ)も流通しています。

いろいろな疑問が湧いてくると思いますが、ご安心ください。
棟方志功の作品は、美術市場では評価の基準が比較的はっきりしている作家です。

まずは、どんな技法の作品があり、どこが評価の中心なのかを整理してみましょう。


棟方志功作品の市場は、板画(木版画)を中心に構成されています
木の板に直接彫り、手刷りで刷られた木版画で、
表から彩色を加えた「手彩」、裏から彩色を施す「裏手彩」が入る作品もあります。

板画(はんが)|評価の中心は「板画」

現在の取引では、
評価・流通ともに最も安定しているジャンルが、この板画です。

◉ 小〜中型板画(20〜40cm前後)

  • シミ・ヤケ・シワがあっても取引成立例が多い
  • 鑑定登録があると、評価が安定しやすい

◉ 中型以上(40〜60cmクラス)

  • 価格帯が比較的高額
  • 《茶韻十二ヶ月》《鐘渓頌》などのシリーズは評価が伸びやすい

◉ 大型・代表作クラス(60cm以上・軸装など)

  • 価格帯が比較的高額
  • 《釈迦十大弟子》《女人観世音》は別格ゾーン
『十大弟子』より「阿那律」 (1955年摺)
https://ja.wikipedia.org/

倭絵(やまとえ/倭画)・書

倭絵は、紙に直接描かれた**肉筆画(手描きの一点もの)**です。
板画とは別の市場で評価され、内容・シリーズ性・資料の有無が重要になってくるジャンルです。

同様に「書」も一点ものとして評価されますが、
こちらも構成や制作時期によって、価格帯には大きな幅があります。

画像引用:https://airmail.news/arts-intel/events/shiko-munakata-a-way-of-seeing


リトグラフ(後年制作作品)

棟方志功のリトグラフ作品の多くは、
本人没後に、原画や既存作品をもとに制作された版画作品です。

板画とは制作背景が異なるため、
市場では同列ではなく、別枠の価格帯で整理されるのが一般的です。

  • 主に1990年代以降の制作
  • エディション数が多い
  • 価格帯は3万〜10万円前後が中心
Shiko Munakata apple tree, 1999 Lithograph Prints & Graphic Art
https://www.mutualart.com/Artwork/apple-tree/B95229CA2A8BEF089B12CF58FAD7B577

「安い=価値がない」というわけではなく、
入口的な需要のあるゾーンとして位置づけられています。

なお、

  • 「棟方板画館」監修シールがあるもの
  • 保存状態が良好なもの

については、安定した需要があります。

棟方志功の査定・買取のポイント

TomChildbirth
棟方志功1959
https://artsandculture.google.com/asset/childbirth-0000/YwGyzNao40NB0Q?hl=ja

① まずは「技法」

最初に見るのは、どの技法の作品かです。

  • 板画か
  • 倭絵・書か
  • 後年制作のリトグラフか

👉 この段階で、評価ゾーンの大枠はほぼ決まります
ここまでの記事で見てきた通りです。

② サイズとシリーズ

次に確認するのが、サイズ感とシリーズ性です。

  • 講談社全集などに掲載されている有名作品
  • 《頌》《板画巻》などの特定シリーズ

これらは市場での位置づけが明確なため、
評価がブレにくい傾向があります。

③ 鑑定登録証書の有無

棟方志功の作品には、
「棟方志功鑑定登録委員会」による鑑定登録証書が付属しているものがあります。

登録証書がある場合、
市場では作品の位置づけが明確になりやすく、
査定や流通がスムーズになるというメリットがあります。

一方で、

  • 登録証書がない
  • 有無が分からない

といった作品でも、
それだけで評価できないと判断されるわけではありません。

棟方志功の場合は、
技法・シリーズ・作品内容によって、
登録証書がなくても市場評価が成立するケースは多くあります。

偽物・複製が不安な方へ

棟方志功は流通量が非常に多いため、
市場には

  • 板画
  • 後年のリトグラフ
  • 複製印刷物

が混在しています。

そのため、

  • 「板画だと思っていたが違った」
  • 「本物かどうか自信がない」

というご相談は、決して珍しくありません。

ですが、
写真から分かる情報は意外と多く、
多くの場合は、技法や位置づけを整理することが可能です。

鑑定登録証書がなくても、
詳しい来歴が分からなくても構いません。

☝️ 買取井浦では、国内外のオークションデータを踏まえたうえで、専門的に査定を行っています。
「間違っていたらどうしよう」と悩むより、
専門家の見立てで一度きちんと整理してみることが大切です。

執筆・監修

井浦 歳和のアバター 井浦 歳和 美術品取引の専門家 (美術商・アートディレクター)

30年以上にわたり、美術品の査定と取引に従事してきました。
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