タイトル:大薮雅孝作品は小品でも強い?美術商が市場データから評価ポイントを調べてみました

この記事では、大薮雅孝作品の市場傾向と査定ポイントを、美術商として実際に作品を確認する際の視点も交えながら整理しています。

ミクストメディア、油彩、紙作品、リトグラフ、陶器作品など、作品形式による違いや、共シール、鑑定書、裏面サイン、保存状態の確認ポイントをわかりやすく解説します。

目次

大薮雅孝のプロフィール

大薮雅孝(おおやぶ まさたか、1937年〜2016年)は、ソウルに生まれ、香川県で育った画家です。東京藝術大学で学び、のちに同大学で教鞭をとり、東京藝術大学名誉教授として後進の指導にもあたりました。

大薮雅孝の作品は、日本画と洋画の枠を横断する独自の表現に特徴があります。岩絵具や顔料、アクリル絵具、油彩など、複数の画材を組み合わせ、従来の日本画とも洋画とも異なる、鮮やかで装飾性のある画面をつくり出しました。

作品には、花、鳥、魚、猫、犬、亀、ふくろう、金魚、果物、野菜など、身近で親しみやすいモチーフがしばしば登場します。単なる写実的な静物画や動物画ではなく、形や色、線のリズムを生かした、デザイン性の高い絵画として描かれています。

作風と代表的な作品テーマ

大薮雅孝の作品は、鮮やかな色彩、装飾的な構成、独自のマチエールに特徴があります。日本画の岩絵具や顔料の質感と、アクリルや油彩の表現を組み合わせることで、平面的でありながら深みのある画面をつくり出しています。

代表的なテーマには、椿、牡丹、薔薇、アマリリス、水仙、シクラメン、カサブランカ、芍薬、朝顔、葡萄、柚子、いちじく、胡瓜、ブロッコリー、葱、山葵、猫、犬、鳩、蛙、蟹、蝉、金魚、風景などがあります。

大薮雅孝作品の魅力は、身近なものを題材にしながら、画面に静かな密度と品格があることです。花や果物、小動物を描いた作品でも、かわいらしさだけではなく、色彩、構成、質感によって独自の存在感が生まれています。

大薮雅孝作品の市場での見られ方

大薮雅孝作品の市場では、パネルやキャンバスにミックストメディアで描かれた一点ものが中心です。花、果実、野菜、猫、鳥、虫、風景などを描いた作品が多く、共シール、裏面サイン、タイトル、年記が確認できる作品が目立ちます。

価格帯としては、F0号からF3号程度の小品でも20万円から40万円前後まで伸びる例があります。F6号からF15号前後の作品では、30万円から70万円前後がひとつの目安になります。大型作品や文献掲載、鑑定書がある作品では100万円を超える例もあります。

実際のデータでは、F0号が29万円、30万円、26万円といった価格で落札されています。また、22.2×16.5cmは34万円となっており、小品でも画面の魅力が強い作品はしっかり評価されています。

一方で、大薮雅孝作品は大きければ必ず高いというわけではありません。サムホールが50万円まで伸びている一方で、F15号やF20号の作品でも不落札となる例があります。

ここは美術商として見ても興味深い点です。大薮雅孝作品では、号数だけでなく、モチーフの面白さ、画面の密度、色の響き、価格設定が市場で大きく影響します。小さい作品でも、思わず手元に置きたくなるような魅力があるものは、競り上がることがあります。

共シール・鑑定書・文献掲載の見方

大薮雅孝作品では、共シール、裏面サイン、タイトル、年記が重要な確認資料になります。今回のデータでも、多くの作品に共シールが付いており、パネル裏やキャンバス裏にサイン、タイトル、年記が記載されています。

「大藪淳子」鑑定書が付く作品も見られます。ベゴニア、朝霞、シクラメン、カーネーションなどでは鑑定書が確認でき、作品確認の安心材料になります。

ただし、鑑定書や文献掲載があるからといって、必ず高く売れるわけではありません。文献掲載や鑑定書がある作品でも、エスティメートが高めの場合や、モチーフ・サイズ・市場のタイミングによっては不落札となる例があります。

資料はとても大切です。しかし市場では、資料性に加えて、実際の画面の魅力、モチーフ、状態、価格設定まで見られます。大薮雅孝作品を査定する際は、資料と作品内容をあわせて確認することが大切です。

大薮雅孝作品の査定で確認したいポイント

大薮雅孝作品を査定する際は、まず作品形式を確認します。市場の中心は、パネルやキャンバスにミックストメディアで描かれた一点ものです。リトグラフや陶器作品もありますが、価格帯は別に考える必要があります。

査定時に確認したい主なポイントは、次の通りです。

  • 作品形式:ミクストメディア、油彩、紙作品、パステル、色鉛筆、リトグラフ、陶器など
  • 支持体:パネル貼付キャンバス、キャンバス、紙、扇面型、陶器など
  • モチーフ:椿、牡丹、薔薇、水仙、猫、犬、鳩、果物、野菜、虫、風景など
  • サイズ:F0、サムホール、F3、F6、F10、F15、F30、F40など
  • サイン・印:画面上のサインや印、裏面サイン、タイトル、年記を確認します
  • 資料:共シール、「大藪淳子」鑑定書、日動画廊・蔵丘洞画廊シール、図録掲載、展覧会歴など
  • 保存状態:ヒビ、絵具の縮み、ヤケ、シミ、ピンホール、紙の剥離、額装状態を確認します

特に大切なのは、正面だけでなく裏面を見ることです。大薮雅孝作品では、裏面にサイン、タイトル、年記が記されている作品が多く、共シールや画廊シールとあわせて作品確認の重要な手がかりになります。

状態面では、絵具や顔料のヒビ、縮み、剥落、紙作品のヤケやシミ、ピンホール、額装による変色などを確認します。状態に多少の注意点があっても落札される例はありますが、画面の見映えや修復の必要性によって評価は変わります。

リトグラフ・陶器作品は別の価格帯で見る

大薮雅孝には、リトグラフや陶器作品もあります。ただし、ミクストメディアの一点ものとは市場での見られ方が異なります。

リトグラフの4枚セットは、複数回不落札となっており、版画作品は一点ものに比べると慎重に見られています。サインやエディション番号があっても、紙の状態、図柄、セット内容、価格設定を確認する必要があります。

陶器作品では、織部皿や信楽壷、花入、磁器に絵付けした作品などが見られます。鑑定書や共箱が付く例もありますが、落札価格は数千円から10万円前後にまとまる例が多く、平面のミクストメディア作品とは分けて判断します。

同じ大薮雅孝の名前がある作品でも、肉筆の一点もの、版画、陶器、印刷物では評価の軸が異なります。査定では、まず作品形式を正確に見分けることが大切です。

大薮雅孝作品のご相談について

大薮雅孝作品は、日本画と洋画を横断した現代絵画として、作品形式、技法、サイズ、主題、保存状態、来歴を丁寧に確認することが大切です。

特に、ミクストメディアの一点ものでは、共シール、裏面サイン、タイトル、年記、鑑定書、画廊シール、図録掲載情報などが大切な確認資料になります。

ご相談の際は、作品全体、サインや印、裏面、額裏、共シール、鑑定書、画廊シール、状態が気になる部分の写真をご用意いただくと確認しやすくなります。

売却を決めていない段階でも問題ありません。「これは肉筆なのか版画なのか知りたい」「共シールや鑑定書をどう見ればよいか知りたい」「今の市場でどのように扱われるのか確認したい」といったご相談も可能です。

大薮雅孝作品は、小品でも魅力が伝わるものがあり、反対に資料がそろっていても市場で選別が働くことがあります。作品ごとの内容を丁寧に見ながら、いくらになるかだけでなく、どのように扱うのがよいかまで確認していきます。

執筆・監修

井浦歳和 — 株式会社ロイドワークスギャラリー代表
WRITTEN & SUPERVISED BY
井浦 歳和 (いうら としかず)
株式会社ロイドワークスギャラリー 代表 / 美術商・画商
  • ▸ 2009年、東京都文京区湯島にてロイドワークスギャラリー創業
  • ▸ 美術品・絵画の買取/展示/査定/鑑定業務に30年以上従事
  • ▸ BSフジ「ブレイク前夜」プロデュース
  • ▸ 戦後洋画から近代日本画まで買取/査定実績多数
  • ▸ 油彩/パステル/リトグラフ/デッサン/陶板画まで幅広く対応

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