竹久夢二作品の買取・査定を美術商が分析|夢二式美人・木版・挿画本の評価ポイント

この記事では、竹久夢二作品の市場傾向と査定ポイントを、美術商として実際に作品を確認する際の視点も交えながら整理しています。

肉筆の美人画、掛軸、水彩、木版、挿画本、楽譜、婦人グラフ、復刻版など、作品形式による違いをわかりやすく解説します。

目次

竹久夢二のプロフィール

宮武東洋 – 三省堂「画報日本近代の歴史8」より。(トリミング済み), パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5254158による

竹久夢二(たけひさ ゆめじ、1884年〜1934年)は、岡山県に生まれた画家・詩人・デザイナーです。本名は竹久茂次郎。明治末から大正、昭和初期にかけて活躍し、「大正ロマン」を象徴する作家として広く知られています。

竹久夢二を代表するイメージといえば、細い首、伏し目がちな表情、しなやかな姿をもつ女性像です。これらは「夢二式美人」と呼ばれ、当時の若い女性や都市文化の感覚と結びつきながら、大きな人気を集めました。

夢二は、特定の画壇に属する作家というより、絵画、詩、挿絵、装幀、楽譜表紙、絵葉書、千代紙、浴衣や日用品のデザインなど、生活の中にある美を幅広く手がけた表現者です。

1914年には東京・日本橋に「港屋絵草紙店」を開き、自身の意匠による絵葉書、千代紙、封筒、半襟などを販売しました。夢二の活動は、絵を美術館や展覧会だけに閉じ込めるのではなく、暮らしの中へ広げようとするものでした。

作風と代表的な作品テーマ

竹久夢二の作品は、抒情性、やわらかな線、哀愁を帯びた人物表現に特徴があります。特に女性像では、細く流れるような輪郭線、伏し目がちなまなざし、物思いに沈むような姿が印象的です。

代表的なテーマには、夢二式美人、女性像、少女、母子、恋、別れ、旅、港、花、椿、宵待草、子ども、抒情画、大正ロマン、装幀、絵葉書、千代紙などがあります。

夢二の美人画は、単なる肖像画ではなく、恋愛感情や孤独、憧れ、時代の気分を映したイメージとして受け止められてきました。華やかさの中に寂しさがあり、装飾性の中に個人的な感情がにじむところに、夢二作品の魅力があります。

黄八丈
竹久夢二1931
油彩画の代表作に数えられる作品です。
https://artsandculture.google.com/asset/8AFiUEy0Puw-rg
『岬』13話挿画[原画](画室にて-モデル中川幹の手相をみる葉山)竹久夢二1923
https://artsandculture.google.com/asset/13/iQH5ZumeDpQqGA

また、夢二は子どもを描いた作品や、詩画集、装幀、楽譜表紙でも重要な仕事を残しています。美術と文学、デザインを横断する作家であるため、作品形式も非常に幅広い点が特徴です。

竹久夢二作品の市場での見られ方

竹久夢二作品の市場では、肉筆の美人画、人物画、自画賛、軸装作品が中心になります。特に、絹本や紙本に彩色された美人画で、鑑定証書や鑑題箱が付く作品は、数十万円から数百万円台で取引されています。

実際のデータでは、「舞妓」が440万円、「青葉」が290万円、「夜長」が140万円、「帯を結ぶ美人」「結髪」「おさん図」がそれぞれ100万円で落札されています。夢二らしい女性像や情緒ある人物表現は、市場でも強く見られています。

一方で、木版、挿画本、婦人グラフ、楽譜、エスタンプ、復刻版などは、肉筆作品とは別の価格帯で考える必要があります。竹久夢二は印刷物や出版物も多く残る作家のため、まず作品形式を見分けることがとても重要です。

肉筆か印刷物かを見分けることが大切です

竹久夢二作品を見るうえで、最初に確認したいのは、肉筆作品なのか、木版や印刷物なのか、後年の復刻や複製なのかという点です。

額に入っている作品でも、肉筆とは限りません。木版画、印刷物、復刻版、複製画、ポスターが額装されている場合もあります。反対に、小さな紙作品や挿絵原画でも、鑑定資料や掲載情報が確認できれば重要な作品として扱われることがあります。

木版や挿画本、楽譜、婦人グラフなどは、夢二の出版文化と深く関わる分野です。ただし、ヤケ、シミ、破れ、欠損、テープ跡、退色などが見られるものも多く、状態によって評価が変わります。

鑑定証書・鑑題箱・資料の重要性

竹久夢二作品では、鑑定証書や鑑題資料が重要な確認材料になります。東京美術倶楽部鑑定委員会、東美鑑定評価機構鑑定委員会の鑑定証書が付く作品は、市場でも確認しやすい資料になります。

また、竹久不二彦、竹久みなみ、有島生馬、東郷青児、大原桂南などの鑑題箱、鑑題シール、鑑定資料が付属する例もあります。箱やシール、証書が残っている場合は、作品と一緒に確認することが大切です。

ただし、鑑定証書があっても必ず高く売れるわけではありません。作品の主題、保存状態、価格設定によっては不落札となる例もあり、市場では作品内容と状態のバランスが見られています。

竹久夢二作品の査定で確認したいポイント

竹久夢二作品を査定する際は、まず作品形式を確認します。肉筆作品、木版、挿画本、楽譜、雑誌、復刻版、複製画では、市場での見られ方が大きく異なります。

査定時に確認したい主なポイントは、次の通りです。

  • 作品形式:紙本彩色、絹本彩色、墨彩、水彩、ペン、インク、木版、挿画本、雑誌、楽譜、エスタンプなど
  • 主題:夢二式美人、女性像、舞妓、童女、母子、自画像、画賛、風景、楽譜表紙、婦人グラフなど
  • 肉筆か印刷物か:筆致、紙質、版面、印刷状態を確認します
  • 落款・印:画面上の落款、印、モノグラム、版上印などを確認します
  • 鑑定資料:東京美術倶楽部鑑定委員会、東美鑑定評価機構鑑定委員会の鑑定証書を確認します
  • 鑑題資料:竹久不二彦、竹久みなみ、有島生馬、東郷青児、大原桂南などの鑑題箱や鑑題シールを確認します
  • 出版資料:奥付、発行年、出版社、掲載誌、楽譜、挿画本、婦人グラフなどを確認します
  • 保存状態:ヤケ、シミ、シワ、破れ、穴、虫食い、欠損、修復、退色、テープ跡、表具の傷みを確認します

特に紙や絹に描かれた作品では、シミ、ヤケ、退色、波打ち、破れ、折れ、虫食い、裏打ち、修復歴が重要です。夢二作品は古い紙ものも多いため、状態確認は慎重に行います。

専門家に確認しておきたい理由

竹久夢二は人気が高く、作品形式が非常に多い作家です。美人画や抒情画の肉筆作品だけでなく、木版画、絵葉書、装幀本、楽譜、千代紙、復刻版、複製画、記念グッズまで幅広く流通しています。

そのため、見た目だけで価値を判断するのは難しい作家です。同じ図柄でも、肉筆、当時の木版画、当時の印刷物、後年の復刻、現代の複製品では、評価の見方が大きく異なります。

また、絵葉書、楽譜、古い本、封筒、千代紙、展覧会資料なども、夢二に関係する資料として評価対象になる場合があります。作品や資料を整理する際には、捨ててしまう前に一度確認することをおすすめします。

竹久夢二作品のご相談について

竹久夢二の作品は、大正ロマンを象徴する作家の作品として、作品形式、技法、制作時期、主題、保存状態、来歴を丁寧に確認することが大切です。

同じ作家の作品でも、肉筆作品、木版画、絵葉書、装幀本、楽譜表紙、千代紙、復刻版、複製画では、市場での見られ方が異なります。

ご相談の際は、作品全体、署名や印、落款、裏面、額裏、箱、鑑定資料、奥付、発行年、出版社、購入時の資料、状態が気になる部分の写真をご用意いただくと確認しやすくなります。

売却を決めていない段階でも問題ありません。「これは肉筆なのか印刷物なのか知りたい」「復刻版か当時の木版か確認したい」「古い楽譜や挿画本も見てもらえるか相談したい」といった内容でも大丈夫です。

竹久夢二作品は、いくらになるかだけでなく、作品や資料をどのように扱うのがよいかまで丁寧に確認していきます。

執筆・監修

井浦歳和 — 株式会社ロイドワークスギャラリー代表
WRITTEN & SUPERVISED BY
井浦 歳和 (いうら としかず)
株式会社ロイドワークスギャラリー 代表 / 美術商・画商
  • ▸ 2009年、東京都文京区湯島にてロイドワークスギャラリー創業
  • ▸ 美術品・絵画の買取/展示/査定/鑑定業務に30年以上従事
  • ▸ BSフジ「ブレイク前夜」プロデュース
  • ▸ 戦後洋画から近代日本画まで買取/査定実績多数
  • ▸ 油彩/パステル/リトグラフ/デッサン/陶板画まで幅広く対応

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