戦後日本の木版画を世界に押し上げた版画家の一人として、斎藤清(1907–1997)は今もなお高い評価を保ち続けています。
大胆な構成、静けさを帯びた色面、木版の素朴さを残しながらもモダンデザインの洗練を備えた作風は国内外で支持され、サンパウロ・ルガノ展など国際展への出品を経て、戦後版画の代表的存在として知られています。
斎藤清は、生涯を通じて多彩なシリーズ作品を制作しました。大胆でモダンな構成美と静謐な色彩感覚を特徴とする斎藤清の作品群から、代表的なシリーズをいくつか詳しく見ていきます。
☝️売却をお考えのお客様へ
「版画なのか複製なのか」「どこで作られたものか分からない」という状態でも大丈夫です。お問い合わせの際は分かる範囲の写真をお送りください。
代表的なシリーズとモチーフ
1. 《会津の冬》シリーズ
雪深い会津地方の民家や寺社の冬景色を題材にした斎藤清の代表作シリーズです。郷里に戻った1938年前後から制作が始まり、1940年には最初の《会津の冬》作品が生まれました。以後1990年代まで生涯にわたりテーマを追求し、最終的に約138点もの《会津の冬》シリーズ作品を1938年から1994年にかけて発表しています
簡潔にデフォルメされた構図と雪の白、墨の黒や灰色との強いコントラストが生み出す緊張感が特徴で、静寂な中にも張り詰めた詩情を湛えています。斎藤清自身、このシリーズで自らの芸術的声を見出したとも評されており、戦後日本版画の到達点の一つとされています。

https://www.mutualart.com/Artwork/Trip-in-silkroad-under-moon/7DE6BF7804750081BF7F38F41F0F92DE
- エディション(何部中の何番か)の記載と直筆サインがあるかを確認
- マット焼け・ヤケ・シミなど、保存状態がそのまま査定に響きます
- 発行元の証明書・シールがあれば一緒に写真に撮って送ってください
「鑑定ないんだけど……」というのもよくあるご質問。査定時に一緒にお伝えいただければOKです。
2. 《慈愛》
斎藤清の《慈愛》は、「慈愛(じあい)」という題名が示すとおり、優しさや慈しみをテーマにした作品群です。母子像や仏像など、穏やかな愛情や祈りの情景をモチーフとしており、人々に安らぎを与える静かな感動があります。代表的な作品の一つに、1975年制作の仏像を題材とした木版画《慈愛》があり、白と黒だけのシンプルな構成ながら仏の穏やかさと慈悲深さを見事に表現していると評価されています。
同じタイトルで複数のバリエーションが存在しますが、この作品は特に完成度が高く、斎藤清自身が「最も気に入っている作品かもしれない」と語ったとも伝えられています。
こうした《慈愛》シリーズは、戦後初期(1950年代)の作品から晩年に至るまで継続的に制作されており、斎藤清の精神性や人間愛を象徴するテーマとなりました。
3.《花と少女》シリーズ
1970年代に精力的に制作された《花と少女》シリーズは、少女の横顔と花を組み合わせたモダンで装飾的な作品群です。

大胆にデフォルメされた少女の横顔と一輪の花による構図は非常にデザイン性が高く、お洒落な雰囲気を湛えています。赤やピンクなど印象的な色彩の花と、シンプルに描かれた少女のコントラストが特徴で、斎藤清の持つ洗練された美的センスがよく表れています。
1971年前後に多数の作品が作られ、現在でもコレクターに人気の高いシリーズです。このシリーズの作品は、斎藤清がサンパウロ展で受賞した《凝視(花)》とも通じるモチーフであり、女性像と花を組み合わせることで生命の美しさや純真さを表現したものといえます。
4. 《ねこ》を題材にした作品
斎藤清は「猫」をモチーフとした作品も多く残しており、初期から晩年まで折々に猫を描いています。

https://www.mutualart.com/Artwork/Hasedera-temple/6D922C65E9662F4A85D3ADBD46E36CAA
斎藤清の作品では木版の木目を意図的に活かした模様が重要な役割を果たしており、まるで猫たちが木目のドレスを纏って美を競うかのような遊び心あふれる情景を生み出しています。高度な技術とデザイン性も評価されており、オークションなどでも《猫》の版画は高値で取引されるなど人気が再燃しています。
注: 斎藤清自身が飼い猫を可愛がっていたことや、猫のフォルムを好んでデザインに取り入れたことも知られています。
5. その他の人気シリーズ
- 《舞妓》《六月》などの京の情景
- 《埴輪》シリーズ
- 海外滞在期の《メキシコ》
- 鎌倉寺社を描く一連の作品
など、多彩なテーマを木版ならではの構成感で描き分けています。
流通している木版の種類と版元
斎藤清の作品は「木版画」が中心であり、その中でテーマごとに様々なシリーズを展開しました。評価の面でも芸術表現の面でも木版画が主軸です。版画ならではの表現可能性を追求した斎藤清の作品群は、現代でもなお色褪せない魅力を放ち続けています。
現在市場に流通している作品の多くは、次の2つの版元によるものです。
① 大塚巧藝社(Otsuka Kogei)
1970〜80年代を中心に最も多く残っている。
- エディション:80〜130
- シートサイズが大きめ
- 会津の冬・鎌倉・慈愛など人気モチーフ多数
② 阿部出版(Abe Publishing)
1950〜60年代の初期作が多く、希少性が高い。
- エディション:30〜50前後
- 色面がややマットで手摺り感が強い
- 《慈愛》《埴輪》など初期の名作が多い
どちらもレゾネ番号(作品目録番号)が存在するため、**大塚巧藝社No.◯/阿部出版No.◯**の記載は、査定時の信頼性の高い材料になります。
まずは写真だけでOKです
「本画じゃないと見てくれないのでは…」、「家族が集めていたものなので、よくわからない…」という方でも、ご心配は不要です。
「これ、版画として評価できますか?」という段階のご相談も歓迎です。
- 作品全体
- サイン・エディション部分のアップ
- 裏面(シール・印刷表示があれば)
この3点があればだいたいのところまでお答えできます。
☝️作品を購入した時期や場所(例:百貨店の画廊・ギャラリー・美術商など)が分かると、査定や真贋確認がより正確になります。
購入時の証明書や販売店の控え、展覧会カタログなどが残っていれば、写真で一緒にお送りください。
購入経路が分かることで、発行元や正規流通ルートを特定しやすくなり、作品の評価の精度がぐっと高まります。
