三木富雄の作品は、はじめて見ると少し戸惑うかもしれません。
なぜ「耳」なのか、なぜ同じ形を繰り返すのか——正直「よく分からない前衛作家」という印象を持つ方も多いと思います。
実際、三木富雄は1960年代の前衛美術の流れの中で活動した彫刻家で、意味を説明するよりも、モチーフを選び続ける行為そのものを作品化した作家でした。
だからこそ、「こんな作品に価値があるの?」「どうやって査定するの?」と感じるのは自然なことです。
けれど実は、三木富雄の作品は1970〜72年頃の《EAR(耳)》作品を中心に、現在でも安定した取引が続いています。
本記事では、作品の種類や評価のされ方、実際の査定ポイントを整理してご紹介します。
「前衛的な“よく分からない”作品だからこそ、どうやって手放したらいいのかわからない……」そんな方にも読んでいただければと思います。
作家紹介:三木富雄

三木 富雄 1973年10月・東京MIKI Tomio,
安齊 重男
https://museumcollection.tokyo/works/99516/
三木富雄(1937–1978)は、戦後日本の前衛彫刻を代表する作家の一人です。
1965年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)などを巡回した「日本の新しい絵画・彫刻」展に出品。1967年のパリ・ビエンナーレをはじめ、ヴェネチアやサンパウロのビエンナーレにも参加し、国際的にも高い評価を受けました。
41歳で急逝したため、作風が大きく変化することなく、
《EAR》シリーズがそのまま代表作として残ったことも、現在の評価の安定につながっています。
なぜ“耳”なのか——1960年代の前衛彫刻
三木富雄は、耳——それも主に左耳——だけをモチーフに作品を制作し続けた彫刻家です。
1960年代の日本前衛美術の中で活動しながら、三木は生涯にわたって「EAR(耳)」という一つの形を繰り返し扱いました。
なぜ耳なのか。
その問いに対して、三木自身は多くを語っていません。
「耳を選んだのではなく、耳が私を選んだ」という言葉に象徴されるように、意味づけよりも、同じ形を作り続ける行為そのものを作品として引き受けた作家でした。

https://www.mutualart.com/Artwork/EAR-815/9372775A11705203
作品の市場動向・評価
――市場に出てくる作品は、ほぼ《EAR(耳)》です
三木富雄の作品は、美術史的には多様な文脈で語られますが、
「商品として流通している作品」という観点で見ると、非常に整理しやすい作家です。
現在の市場に出てくる作品の大半は、
《EAR(耳)》シリーズの立体作品に集中しています。
- モチーフ:耳(多くは左耳)
- 素材:アルミニウム合金
- 技法:鋳造・仕上げによる彫刻作品
- 制作年代:1960年代半ば〜1970年代前半が中心
絵画やドローイングが多層的に流通する作家ではないので、
三木富雄の場合は各作品の種別が明快であるのが特徴です。

https://www.artsy.net/artwork/tomio-miki-ear
三木富雄のEAR作品は、サイズと形式によって評価のゾーンが分かれます。
小型作品(〜20cm前後)
- 手のひら〜卓上サイズのEAR
- 額装されているものもあり
- 市場では比較的流通量が多い
→
コレクションの入り口として位置づけられることが多く、
価格帯も三木富雄作品の中では抑えめです。
中型作品(30cm前後)
- 壁掛け・半立体的な存在感
- 1970〜72年制作のものが多い
- 鑑定登録証書付きの例が多く、市場の中心
→
三木富雄の代表的な価格帯・評価帯。
作品としてのバランスが良く、コレクターからの需要も安定しています。
大型作品(60〜80cmクラス)
- 床置き・大きな空間を前提とした彫刻
- 文献掲載作品や個体管理が明確なものが多い
→
流通数は少ないものの、
美術館・法人・本格コレクター向けの評価ゾーンに入ります。
例外的な形式
- ケースに複数の耳を収めたセット作品
- 《The Last EAR》など後年に限定鋳造された作品
- プラスチック素材の作品(評価帯は別枠)
三木富雄作品の査定・買取のポイント
三木富雄の査定では、「きれいかどうか」「意味が分かるかどうか」よりも、
その作品が“正しい個体”かどうかを重視します。
① サイズと制作年代
- サイズ感は価格帯に直結
- 特に 1970〜1972年前後の作品は評価が安定
② 鑑定登録証書の有無
- 日本洋画商協同組合の鑑定登録証書が付属しているか
- 市場流通では重要な判断材料になります
- ない場合でも、内容次第で確認・相談は可能
③ コンディションの考え方
- アルミニウム合金のため
サビ・シミ・コスレ・テープ跡などは比較的よく見られます - 多少の経年変化があっても
評価が大きく崩れるとは限りません
→「状態が完璧でないから価値がない」という作家ではありません。
④ 文献掲載・来歴
- 展覧会図録や作品集への掲載
- 購入時の資料やギャラリー情報
分かる範囲で構いませんので、
情報があれば査定の精度が高まります。
☝️ 買取井浦では、国内外のオークションデータを踏まえたうえで、専門的に査定を行っています。
「耳だけの作品」「意味がよく分からない……」そういう場合でも大丈夫です。
