熊谷守一作品の価値はどう決まる?査定・鑑定のポイントをわかりやすく解説

熊谷守一の作品には、数万円で取引される版画や書がある一方で、油彩画が数千万円に達するケースもあります。
同じ作家の作品なのに、ここまで価格の幅があると、

「熊谷守一作品の価格ってどのように決まってるの?」
「うちにある作品は、いったいどのあたりに位置するんだろう?」

疑問が出てくるのは、とても自然なことだと思います。

本記事では、まず熊谷守一という作家の歩みや特徴を整理しながら、
現在の美術市場の中で、作品がどのように見られているのかを、全体像から分かりやすくご紹介していきます。

目次

作家紹介:熊谷守一

https://ja.wikipedia.org/

熊谷守一(1880–1977)は、近代から戦後にかけて活動した、日本を代表する洋画家の一人です。

東京美術学校(現在の東京藝術大学)で黒田清輝に学び、若い頃は写実的な油彩画を制作していましたが、次第に装飾性や説明性をそぎ落とし、形と色を極限まで単純化した独自の画風へと向かっていきました。

特に戦後以降に描かれた、猫・鳥・昆虫・草花といった身近な自然を主題とする作品群は、「子どもの絵のよう」とも評される一方で、長年の探究の末に到達した静けさと強度を備えた表現として高く評価されています。

晩年は30年以上にわたり自宅の庭をほとんど出ずに制作を続け、その姿勢や生き方そのものも含めて、現在では「日本近代美術における孤高の存在」として位置づけられています。

Morikazu Kumagai Lily and butterfly from KUMAGAI MORIKAZU COLLECTION woodcut
https://www.mutualart.com/

実際に熊谷は、1967年に文化勲章の内定を受けながら、これを辞退しています。理由については諸説ありますが、「これ以上、人が訪ねてくるようになるのは困る」といった趣旨の言葉が伝えられており、名誉よりも日々の静かな制作生活を大切にしていたことがうかがえます。

熊谷守一作品の査定・買取ポイント

熊谷守一の作品は、数万円で動くものから、数千万円に達するものまであります。
「え、同じ作家なのに?」と驚くのも当然です。では、何がこの価格差を生むのでしょうか。

理由のひとつは、作品の種類(メディア)がとても幅広いこと。
油彩だけでなく、水彩、素描、書、版画など、さまざまなかたちで作品を残しています。

ここから、どんな作品がどんな相場になりやすいのか、順番に整理していきましょう。

まず重視されるのは「作品の種類」

市場では、熊谷守一の作品は大きく分けて、次のように見られています。

  • 油彩画(キャンバス・板絵)
  • 紙作品(水墨淡彩・素描・パステルなど)
  • 版画など(木版・シルクスクリーンなど)
  • エスタンプなど(没後制作・複製的作品)
Morikazu Kumagai Calligraphy Ink On Paper
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このように、作品の種類ごとに整理されており、それぞれで見られるポイントや価格帯が異なります。

中でも油彩画は、熊谷守一を代表する作品として扱われることが多く、戦前から戦後にかけて描かれた完成度の高いものや、形と色を思いきり単純化した“熊谷らしさ”がはっきり出ている作品は、オークションでも頭ひとつ抜けた評価を受けています。

一方で、水彩や素描、書といった紙作品は点数も多く、描かれた背景もさまざまです。そのため、油彩に比べると、比較的手に取りやすい価格帯で流通しているものも少なくありません。

版画作品も一定数存在します。木版画やリトグラフなどが中心で、価格帯も幅広く、内容や状態によっては手頃なものから評価の高いものまでさまざまです。

After Morikazu Kumagai Calico cat woodcut Prints & Graphic Art
https://www.mutualart.com/

大切なのは、価格の高い・低いが、そのまま作品の価値を決めているわけではない、という点です。
熊谷守一の場合は、作品の種類や制作された時期、サイズ、状態、どのような経緯で手元に来た作品なのか——そうした点をひとつずつ整理して見ていくことが、とても重要になります。

鑑定登録証書の有無について

熊谷守一の作品には、

  • 「熊谷守一水墨淡彩画鑑定登録会」
  • 「東美鑑定評価機構鑑定委員会」(主に油彩)

といった鑑定登録証書が付属しているものがあります。

鑑定登録証書がある場合、
作品の真贋や位置づけが明確になるため、査定や流通がスムーズになるというメリットがあります。

ただし重要なのは、

鑑定登録証書がない=価値がない
というわけではない、という点です。

実際の市場では、
鑑定が付いていない作品でも、内容や来歴によって十分に評価されているケースが多く見られます。

➂ モチーフと出来の差が価格に反映されやすい

熊谷守一の場合、

  • 昆虫(蟻・蜂・蜻蛉など)
  • 花・果実
  • 裸婦

といったモチーフは、コレクターからの人気が安定しています。

同じモチーフでも、

  • 構図の完成度
  • 線や色の簡潔さ
  • 熊谷らしさがどれだけはっきり出ているか

によって、落札価格に大きな差が出るのが特徴です。

④ 版画作品について

熊谷守一は版画作品も多く残しており、
木版画集やシルクスクリーン作品が現在も市場に数多く流通しています。

版画の場合は、

  • どの版画集に含まれる作品か
  • 岐阜新聞社のレゾネに掲載されているか
  • エディション数(EAか、通常エディションか)
  • 保存状態(ヤケ・シミ・退色)

といった点が、査定の重要な判断材料になります。

⑤ コンディションと付属品も無視できない要素

熊谷作品は紙作品が多いため、

  • ヤケ
  • シミ
  • シワ
  • 修復の有無

といったコンディションが査定額に影響します。

また、

  • 共箱
  • 共シール
  • 展覧会図録への掲載歴

が確認できる場合は、評価材料としてプラスになることもあります。

「高そうに見えないから価値がない」「小さいから安いに違いない」と早合点しなくていいということです。
熊谷守一の場合、作品の位置づけをきちんと整理することで、適切な評価ができるケースは少なくありません。

「これは油彩なのか、紙なのか分からない」
「版画かどうか自信がない」
そんな段階でも、写真を見ながら一緒に確認することができます。

☝️ 買取井浦では、国内外のオークションデータを踏まえたうえで、専門的に査定を行っています。
「どんなものかわからない‥‥どのくらいの価値があるのかわからない‥‥」と悩むより、
専門家の見立てで一度きちんと整理してみることが大切です。

執筆・監修

井浦 歳和のアバター 井浦 歳和 美術品取引の専門家 (美術商・アートディレクター)

30年以上にわたり、美術品の査定と取引に従事してきました。
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