アート作品を買ったあと、皆さんは何を残していますか。
作品を飾って楽しむことはもちろん大切ですが、将来的に査定や売却が必要になることがあります。その際、作品情報を残しておくことがとても大切です。

「気に入って買った作品だから、売るつもりはない」
「自分が楽しむために買ったものだから、資料までは必要ない」
「箱は場所を取るから、処分してもいいのでは」
そう思われる方も多いかもしれません。
けれど、美術品は長く時間をかけて受け継がれていくものです。
若手作家の作品であっても、作家の活動が広がり、将来、美術館や展覧会に関わる機会が生まれる可能性もあります。
そのとき、記録などが残っていると、その作品がどのように選ばれ、どのように大切にされてきたのかを伝えやすくなります。
作品情報を残すことは、売るためだけの準備ではありません。
作品を次の持ち主や次の世代へつなぎ、文化として残していくための小さな手入れでもあります。
この記事では、アートを買ったあとにまずしておいた方がいいことを、美術商の視点からわかりやすくご紹介します。
まずは作品情報を残しておきましょう
アートを購入したら、まず残しておきたいのは作品情報です。
作品情報とは、その作品がどのような作品なのかを示す基本的な情報のことです。

たとえば、次のようなものがあります。
・作家名
・作品名
・制作年
・技法
・サイズ
・エディション番号
・サインの有無
・購入日
・購入価格
・購入先
・額装の有無
・付属品の有無
こうした情報は、購入した直後であればすぐに確認できます。
しかし、時間が経つと、作品名や制作年、購入価格、購入先などは意外と忘れてしまうものです。
特に、複数の作品を持っている場合や、長く保管している作品の場合、「いつ、どこで、いくらで買ったのか」がわからなくなることがあります。
作品そのものは手元にあっても、情報が失われてしまうと、査定や売却、相続、作品整理の際に確認が難しくなることがあります。
アートを購入したら、作品情報をメモにまとめたり、購入時の資料をファイルに入れたりして、できるだけ早めに整理しておくと安心です。
領収書・請求書・購入時の資料は保管しておく
作品を購入したときの領収書や請求書も、できるだけ保管しておきましょう。
領収書や請求書には、購入日、購入価格、購入先などが記録されています。
これは、将来的にその作品の来歴を確認するうえで役立つことがあります。
また、ギャラリーや百貨店、アートフェア、作家本人から購入した場合には、作品リスト、販売証明書、メールのやり取り、展覧会案内、図録なども残しておくとよいでしょう。
こうした資料は、単なる事務書類ではありません。
その作品が、どこで、どのように購入されたのかを示す手がかりになります。
作品の価値は、作品そのものだけで決まるわけではありません。
作家名、来歴、購入経路、展覧会歴、証明書、保存状態など、さまざまな情報が判断材料になります。
購入時の資料は、作品を支える大切な情報として、できるだけまとめて保管しておきましょう。
箱や付属品は、できるだけ捨てない方が安心です
意外と大切なのが、作品の箱や付属品です。
絵画や版画、陶芸、彫刻などには、作品箱、差し箱、合わせ箱、収納箱、袋、黄袋、証明書、鑑定書、販売証明書、額装、マット、作品カードなどが付いていることがあります。
これらは場所を取るため、処分したくなることもあるかもしれません。
しかし、美術品の場合、箱や付属品が作品と一緒に残っていることはとても大切です。
箱は、作品を保管したり移動したりするときに役立ちます。
また、箱に作家名、作品名、技法、サイズ、購入先、管理番号などが記されている場合もあります。
特に、陶芸、彫刻、工芸作品、日本画、掛軸、版画などでは、箱や付属品が査定時の確認材料になることがあります。
もちろん、箱がないからといって、必ず価値がなくなるわけではありません。
ただ、箱や資料が残っていることで、作品の確認がしやすくなり、次の持ち主にも安心して引き継ぎやすくなります。
「いつか売るかもしれないから残す」というだけではありません。
作品を大切に扱い、次に伝えるためにも、箱や付属品はできるだけ作品とセットで保管しておくことをおすすめします。
作品の写真を撮っておく
アートを購入したら、作品の写真も撮っておきましょう。

正面から撮影した写真だけでなく、次のような写真も残しておくと安心です。
・作品全体の写真
・サイン部分の写真
・裏面の写真
・額装の写真
・箱や付属品の写真
・証明書や鑑定書の写真
・設置場所の写真
作品の裏面には、作家名、作品名、制作年、ギャラリーシール、展覧会シール、管理番号などが記されている場合があります。
また、作品の状態を記録しておく意味でも、写真は役立ちます。
たとえば、購入時の状態、額装の状態、設置場所、保管状態などがわかる写真があれば、後から確認しやすくなります。
スマートフォンで撮影した写真でも構いません。
作品を購入したタイミングで、作品本体、裏面、サイン、箱、証明書をまとめて撮影しておくと、あとで整理しやすくなります。
コレクター同士で、作品写真を自慢し合うのも楽しいですよ!
美術に携わるものとして、お客様のスマホに入ったコレクションの写真を見せていただけるのは嬉しいものです。
ぜひ撮っておきましょう。
「売るつもりはない」作品こそ、記録を残しておく
お気に入りの作品ほど、「売るつもりはないから、資料までは必要ない」と思われるかもしれません。
しかし、売るつもりがない作品こそ、記録を残しておくことが大切です。

美術品は、自分だけで完結するものではありません。
長く飾っているうちに、引っ越しや模様替え、家族構成の変化、相続、保管場所の問題などが起こることがあります。
また、作家の活動が広がったり、作品が展覧会で紹介されたり、将来的に資料として重要になることもあります。
若手作家の作品であっても、将来その作家が大きく評価される可能性は十分にあります。
美術館や展覧会に作品を貸し出すことになったり、作家の資料整理のために来歴が必要になったりすることもあるかもしれません。
そのとき、いつ、どこで、どの作品を購入したのかがわかることは、とても大切です。
事業用としてアートを購入した場合に残しておきたい記録については、別の記事でも詳しくご紹介します。

アートを買うことは、作品を所有することです。
そして、作品情報を残すことは、その作品を文化として次につないでいくことでもあります。
大切にしてきた作品をきちんと次につなぐためにも、購入時の記録や資料を残しておくことは大切です。
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