この記事では、関根伸夫作品の市場傾向と査定ポイントを、美術商として実際に作品を確認する際の視点も交えながら整理しています。
位相絵画、立体作品、版画、ドローイング、プロジェクト作品、カタログ収録作品など、作品の種類による違いや、共シール、サイン、年記、エディション番号、鑑定登録証書、文献掲載、保存状態の確認ポイントをわかりやすく解説します。
関根伸夫のプロフィール

関根伸夫(せきね のぶお、1942年〜2019年)は、埼玉県大宮市、現在のさいたま市に生まれた現代美術家・彫刻家です。多摩美術大学で学び、1960年代後半から1970年代にかけて、日本の現代美術を大きく変えた「もの派」を代表する作家の一人として活動しました。
関根伸夫の名を広く知らしめたのが、1968年に神戸の須磨離宮公園で発表された《位相―大地》です。地面に円筒形の穴を掘り、その掘り出した土を同じ形の円柱として隣に置くという作品で、彫刻とは何か、作品とは何かを問い直す重要な表現となりました。
この作品は、素材を加工して形を作るという従来の彫刻とは異なり、土、穴、空間、場所そのものを作品として見せるものでした。関根伸夫は、物質と空間、存在と不在、見ることと認識することの関係を、シンプルでありながら強い造形によって示しました。
その後も、石、鉄、ステンレス、鏡、空間などを用いた立体作品や環境的な作品を制作し、さらに「位相絵画」と呼ばれる平面作品にも取り組みました。もの派の中心的作家としてだけでなく、戦後日本の現代美術を考えるうえで重要な作家です。

作風と代表的な作品テーマ
関根伸夫作品の魅力は、物質そのものの存在感と、それを置く場所や空間との関係にあります。作品は派手な装飾や物語を持つものではなく、石、土、鉄、鏡面、円、柱、穴といった要素を通して、見る人に「そこにあるもの」と「見えないもの」を意識させます。

代表的なテーマには、位相、大地、空間、物質、存在と不在、円筒、石、鉄、鏡、環境、場所などがあります。特に《位相―大地》以降の作品では、ものの形だけではなく、配置や周囲の空間そのものが作品の一部として扱われています。
1980年代以降に展開された「位相絵画」では、立体や空間への関心を平面の中に持ち込み、幾何学的な形や構造を用いた作品を制作しました。円、三角形、四角形、ピラミッド、月影、光、集合と拡散といった要素が、画面の中で緊張感を持って構成されています。
立体作品と平面作品のどちらにも、関根伸夫らしい思考の明快さがあります。素材や形は簡潔でありながら、見る人の認識を揺さぶるような構造を持っている点が、関根伸夫作品の大きな特徴です。

関根伸夫作品の市場での見られ方
関根伸夫作品は、国内オークションでも継続して取引されています。市場で中心となっているのは、1980年代後半から1990年代にかけて制作された「位相絵画」です。F3号、F6号、F10号、F15号、F20号、F40号、F100号、P150号など、さまざまなサイズの作品が確認できます。

位相絵画では、作品裏の共シール、日本洋画商協同組合の鑑定登録証書、文献掲載の有無が重要な確認材料になります。特に『位相絵画』や『関根伸夫 位相絵画 II』などに掲載されている作品は、作品確認の手がかりとして丁寧に見られます。
確認できるオークションデータでは、F3号からF6号程度の小品でも数十万円台で取引される例が多く見られます。F10号からF25号程度の作品では、作品内容や文献掲載、状態によってさらに評価が伸びる例があります。
大型の位相絵画では、一般的な小品とは異なる価格帯で取引される例があります。P150号の《○△□》や、P150号の《光の中で》のような大画面作品では、数百万円から1,000万円を超える落札例も確認できます。大きな作品では、サイズだけでなく、制作年、シリーズ性、画面構成、文献掲載、搬入や保管の条件も含めて確認が必要です。
また、石や金属を用いた立体作品も、関根伸夫の作家性を考えるうえで重要です。1980年代の石・金属作品やブロンズ、金属オブジェでは、位相絵画とは別の市場で見られ、素材、サイズ、刻サイン、エディション、状態が評価に関わります。
一方で、版画作品やエンボスレリーフ、カタログ収録のオリジナル作品は、位相絵画や立体作品とは価格帯が異なります。リトグラフ、シルクスクリーン、エンボスレリーフ、金箔を用いた版画では、数万円台から十数万円台で取引される例が多く、サイン、エディション番号、状態、セット内容を確認します。
関根伸夫はもの派を代表する重要作家ですが、作家名だけで一律に評価が決まるわけではありません。位相絵画か、立体作品か、版画か、ドローイングかによって市場での見られ方は大きく変わります。また、同じ位相絵画でも、サイズ、制作年、モチーフ、文献掲載、共シール、鑑定登録証書、状態によって反応に差が出ます。
市場での見方は、おおまかに次のように分けられます。
- 位相絵画:関根伸夫作品の市場で中心的に見られる分野です。共シール、鑑定登録証書、文献掲載、サイズ、状態を確認します。
- 大型作品:F100号やP150号などの大画面作品は、作品内容や掲載歴によって大きく評価される例があります。保管・搬出条件も重要です。
- 立体作品:石、金属、ブロンズ、オブジェなどがあります。素材、刻サイン、エディション、重量、設置状態を確認します。
- 版画作品:リトグラフ、シルクスクリーン、エンボスレリーフ、金箔作品などがあります。サイン、エディション番号、シート状態を確認します。
- ドローイング・プロジェクト作品:紙に水彩、インク、鉛筆、コラージュなどの作品があります。制作年、サイン、タイトル、資料性を見ます。
- 資料・カタログ収録作品:オリジナル作品入りカタログなどは、通常の作品とは異なる見方になります。
関根伸夫作品は、現代美術としての美術史的な位置づけと、作品ごとの形式・資料性をあわせて確認することが大切です。特に位相絵画では、作品の裏面情報や鑑定登録証書、文献掲載の有無が、査定時の重要な判断材料になります。
関根伸夫作品の査定で確認したいポイント
関根伸夫作品を査定する際は、まず作品の種類を確認します。位相絵画なのか、立体作品なのか、版画なのか、ドローイングやプロジェクト作品なのか、カタログ収録作品や資料類なのかによって、査定で見るポイントが異なります。
査定時に確認したい主なポイントは、次の通りです。
- 作品の種類:位相絵画、立体作品、版画、ドローイング、プロジェクト作品、資料類など
- 制作年:1960年代から1970年代の初期作品、1980年代以降の位相絵画など、時期によって見方が変わります
- サイズ:F3号、F6号、F10号、F40号、F100号、P150号など、作品サイズを確認します
- サイン・年記:画面、裏面、額裏、台座、底面などにサインや年記があるかを確認します
- 共シール:位相絵画では作品裏の共シールが重要な確認材料になります
- 鑑定登録証書:日本洋画商協同組合の鑑定登録証書などを確認します
- 文献掲載:『位相絵画』『関根伸夫 位相絵画 II』などへの掲載を確認します
- 版画の情報:技法、サイン、エディション番号、版面やマージンの状態を確認します
- 立体作品の情報:素材、重量、刻サイン、エディション番号、台座、設置部の状態を確認します
- 保存状態:ヒビ、箔の浮き、剥落、コスレ、変色、シミ、ヤケ、波打ち、金属のキズや錆など
位相絵画では、作品裏の情報が大切です。共シール、タイトル、制作年、作品番号、鑑定登録証書の有無を確認します。額に固定されている作品もあるため、無理に外さず、確認できる範囲の写真を撮ることが大切です。
文献掲載作品の場合は、掲載書籍名、ページ番号、作品番号が査定の参考になります。『位相絵画』や『関根伸夫 位相絵画 II』などに掲載されている場合は、作品の特定に役立つ資料として確認します。
状態面では、画面のヒビ、箔の浮き、金箔や金彩の剥落、縁沿いのコスレ、変色、ヘコミなどを確認します。関根伸夫の位相絵画では素材や画面構造に特徴があるため、一般的な油彩やアクリル作品とは異なる見方が必要になる場合があります。
立体作品では、正面だけでなく、側面、裏面、底面、台座、設置部分を確認します。石や金属、ブロンズ作品では、欠け、擦れ、錆、変色、刻サイン、エディション番号、重量、搬出方法も確認したいポイントです。
版画作品では、サイン、エディション番号、技法、シートサイズ、額装状態を確認します。ヤケ、シミ、波打ち、マージンカット、シートズレ、テープ貼付、額の傷みなどが評価に影響することがあります。
関根伸夫作品は、もの派の美術史的な位置づけと、作品そのものの形式・資料性が重なって評価されます。査定では、作家名だけでなく、作品形式、制作年、素材、サイズ、共シール、鑑定登録証書、文献掲載、保存状態を総合的に確認することが大切です。
執筆・監修
- ▸ 2009年、東京都文京区湯島にてロイドワークスギャラリー創業
- ▸ 美術品・絵画の買取/展示/査定/鑑定業務に30年以上従事
- ▸ BSフジ「ブレイク前夜」プロデュース
- ▸ 戦後洋画から近代日本画まで買取/査定実績多数
- ▸ 油彩/パステル/リトグラフ/デッサン/陶板画まで幅広く対応
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