この記事では、駒井哲郎作品の実際のオークション結果をもとに、エッチング、アクアチント、メゾチント、版画集、モノタイプなどの市場傾向を整理しています。作品名や技法、制作年、サイン、エディション番号、レゾネ番号、エンボス印、保存状態など、査定で確認されやすいポイントもわかりやすく解説します。
プロフィール
駒井 哲郎(こまい てつろう、1920年〜1976年)は、東京生まれの版画家です。東京美術学校油画科(現・東京藝術大学)で学び、戦後日本の銅版画界を代表する存在として知られています。
1940年代後半から銅版画制作を本格化し、1948年に発表した《束の間の幻影》は、日本の現代銅版画史における重要な作品とされています。当時の日本では木版画が主流でしたが、駒井はエッチングやアクアチントなどの本格的な銅版画技法を追求し、戦後日本における銅版画表現の発展に大きな影響を与えました。
1950年代以降は国際展への出品も重ね、サンパウロ・ビエンナーレや東京国際版画ビエンナーレなどで高い評価を獲得。後進の版画家にも大きな影響を与え、日本現代版画の礎を築いた作家の一人として位置づけられています。
作品は東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、町田市立国際版画美術館など国内外の主要美術館に収蔵されています。
作風と代表的な作品テーマ
駒井哲郎の作品は、繊細で緻密な銅版画技法によって表現された幻想的かつ詩的な世界観に特徴があります。
代表的なテーマは、「鳥」「都市」「廃墟」「夢」「記憶」「幻想風景」「人物像」などです。現実の風景をそのまま描写するのではなく、内面的なイメージや無意識の世界を思わせる独特の空間を構築しました。
初期作品ではシュルレアリスムの影響が見られますが、次第に駒井独自の静謐で幻想的な表現へと発展します。鳥や建築物、階段、窓などのモチーフが繰り返し登場し、どこか夢の中のような不思議な空間を生み出しています。
代表作には《束の間の幻影》《人それを呼んで反歌という》《鳥のいる風景》などがあり、日本の銅版画表現を国際的水準へ押し上げた作品群として高く評価されています。

出典: https://www.geijutsu.tsukuba.ac.jp/ishii/archives/5781
束の間の幻影 1951
サンドペーパーによるエッチング
この「束の間の幻影」は、駒井哲郎の初期を代表する作品のひとつとして知られています。同作品は、東京国立近代美術館、東京都現代美術館、福岡市美術館、横浜美術館、三重県立美術館、筑波大学石井コレクションなど、複数の美術館・大学コレクションに所蔵例が確認できます。

東京都歴史文化財団「Tokyo Museum Collection (ToMuCo)」より取得した収蔵品データ. 取得日2022-08-22.
提供元作品URL:
https://museumcollection.tokyo/works/6381622/
市場ではエッチングやアクアチントを中心とする版画作品の流通が多く、サイン入りの限定版や人気図柄はコレクターから高い支持を集めています。日本近代版画史において長谷川潔と並ぶ重要な銅版画家の一人として、現在も高い評価を維持しています。
駒井哲郎作品のオークション市場の実態
駒井哲郎作品は、国内オークションでは銅版画を中心に取引されています。エッチング、アクアチント、メゾチント、ソフトグランドエッチング、シュガーアクアチントなど、銅版画の技法を幅広く用いた作品が多く見られます。
今回確認できるデータでは、単品の版画作品は数万円台から数十万円台まで幅があります。1950年代の初期作品や、人気のある幻想的なモチーフ、希少なエディション、状態の良い作品では、数十万円から100万円を超える落札例も確認できます。
一方で、駒井哲郎ほど評価のある作家でも、すべての作品が安定して落札されるわけではありません。ヤケ、シミ、マージンカット、テープ跡、紙の毛羽立ち、波打ち、版面の傷みなどがある場合や、エスティメートとのバランスによっては、市場で選別が働きます。
市場での見方は、おおまかに次のように分けられます。
- 初期の銅版画作品:1940年代から1950年代の作品は注目されやすい分野です。小品でも、制作年や希少性によって高く評価される例があります。
- エッチング・アクアチント作品:駒井哲郎作品の中心的な分野です。サイン、エディション番号、レゾネ番号、刷りの状態を確認します。
- メゾチント・ソフトグランドエッチング作品:幻想的な黒や深い階調が魅力で、作品内容や制作時期によって評価が変わります。
- 版画集・詩画集:複数点で構成される作品は、揃い具合、奥付、ケース、エディション、保存状態が重要です。
- モノタイプ作品:ed.1の一点ものとして扱われるため、通常の版画とは異なる価格帯で評価される例があります。
駒井哲郎作品では、美術出版社No.や東京都美術館No.などのレゾネ番号が記載される例が多く見られます。また、「TETSURO KOMAI」のエンボス印、雁皮刷り、和紙刷り、画廊シールなども作品確認の手がかりになります。
保存状態も重要です。データ上では、シート全体のヤケ、マージンや裏面のシミ、テープ貼付、テープの剥し跡、紙の剥離、波打ち、版面の小さなシミやコスレなどが多く見られます。紙作品であるため、版面だけでなく、マージンや裏面まで確認することが大切です。
駒井哲郎作品の査定で確認したいポイント
駒井哲郎作品を査定する際は、まず技法と制作時期を確認します。同じ銅版画でも、1940年代から1950年代の初期作品か、1960年代以降のシリーズ作品か、後年の刷りかによって市場での見られ方が変わります。
査定時に確認したい主なポイントは、次の通りです。
- 技法:エッチング、アクアチント、メゾチント、ソフトグランドエッチング、シュガーアクアチント、モノタイプなど
- 制作年:1940年代、1950年代の初期作品か、1960年代以降の作品か
- 作品名・シリーズ:マルドロオルの歌、九つの夢から、人それを呼んで反歌という、COMPOSITION DE LA NUITなど
- サイン:鉛筆サイン、スタンプサインの有無
- エディション番号:EA、HC、ed.10、ed.20、ed.30、ed.100など
- レゾネ番号:美術出版社No.、東京都美術館No.などの記載
- エンボス印:「TETSURO KOMAI」のエンボス印があるか
- 紙質・刷り:雁皮刷り、和紙刷り、後刷り、Variantの有無など
- 保存状態:ヤケ、シミ、波打ち、マージンカット、テープ跡、紙の剥離、版面のコスレなど
- 付属品:オリジナルケース、奥付、画廊シール、資料、額裏の情報など
特に駒井哲郎作品では、制作年とレゾネ番号の確認が大切です。初期作品や希少なエディション、詩画集に関わる作品は、市場でも注目されやすい傾向があります。
また、版画集やセット作品では、作品が揃っているか、奥付やケースが残っているか、サインやエディションが確認できるかによって評価が変わります。一点だけの作品と、まとまったセットでは市場での見られ方が異なります。
駒井哲郎作品は、銅版画としての専門性が高く、状態や資料の確認が重要です。作品全体、サイン、エディション番号、レゾネ番号、エンボス印、版面、マージン、裏面、額裏、ケースや資料の写真があると、作品の位置づけを整理しやすくなります。
駒井哲郎作品の買取でよくあるご質問
Q. 駒井哲郎の銅版画は買取できますか?
A. はい。駒井哲郎のエッチング、アクアチント、メゾチント、シュガーアクアチントなどの銅版画を査定しています。作品名、制作年、サイン、エディション番号、レゾネ番号、保存状態を確認します。
Q. どのような作品が評価されやすいですか?
A. 1940年代から1950年代の初期作品、幻想的なモチーフの作品、希少なエディション、モノタイプ、詩画集に関わる作品などは注目されやすい傾向があります。ただし、状態やエスティメートとのバランスによって市場での反応は変わります。
Q. シミやヤケ、テープ跡があっても査定できますか?
A. はい、査定できます。駒井哲郎作品は紙作品が中心のため、ヤケ、シミ、波打ち、マージンカット、テープ跡、紙の剥離などが見られることがあります。状態は評価に影響しますが、作品内容や制作年、レゾネ番号も含めて総合的に確認します。
Q. 版画集や詩画集も相談できますか?
A. はい。COMPOSITION DE LA NUIT、九つの夢から、人それを呼んで反歌という、マルドロオルの歌など、版画集や詩画集に関わる作品も確認できます。揃い具合、奥付、ケース、サイン、エディション番号、保存状態が大切です。
駒井哲郎作品の査定・ご相談について
駒井哲郎作品は、エッチング、アクアチント、メゾチント、シュガーアクアチント、モノタイプなど、技法や制作時期によって査定の見方が変わります。特に1940年代から1950年代の初期作品、レゾネ番号のある作品、エンボス印のある作品、詩画集・版画集に関わる作品は、作品ごとの確認が大切です。
写真のみのご相談でも問題ありません。作品全体、サイン、エディション番号、レゾネ番号、美術出版社No.や東京都美術館No.の記載、エンボス印、版面、マージン、裏面、額裏、画廊シール、ケースや奥付、状態が気になる部分の写真をお送りください。
売却を前提にしていない場合でも、「これはどの技法の作品か知りたい」「レゾネ番号の見方がわからない」「シミやヤケ、テープ跡が査定に影響するか確認したい」といった段階からご相談いただけます。
執筆・監修
- ▸ 2009年、東京都文京区湯島にてロイドワークスギャラリー創業
- ▸ 美術品・絵画の買取/展示/査定/鑑定業務に30年以上従事
- ▸ BSフジ「ブレイク前夜」プロデュース
- ▸ 戦後洋画から近代日本画まで買取/査定実績多数
- ▸ 油彩/パステル/リトグラフ/デッサン/陶板画まで幅広く対応
