アートの証明書って何?本物・複製・版画・共シールの見方を美術商が解説

「この作品は本物ですか?」
「証明書がないと価値はありませんか?」
「版画や複製画は、本物ではないのでしょうか?」

美術品の査定や買取のご相談を受けていると、このような質問をいただくことがあります。

アート作品の世界では、「本物」という言葉が少し分かりにくいことがあります。

たとえば、作家が直接描いた一点物の原画はもちろん本物です。
一方で、作家が制作に関わった版画や、サイン入りのエディション作品も、正規の作品として扱われることがあります。

つまり、「本物かどうか」と「一点物かどうか」は、必ずしも同じ意味ではありません。

また、作品証明書が付いている作品もあれば、日本のギャラリーや百貨店で販売された作品のように、紙の証明書はなく、作品裏や額裏、箱に貼られた共シール、ギャラリーシール、領収書、作品リストなどが大切な確認資料になっている場合もあります。

この記事では、アートの証明書とは何か、本物・複製・版画の違い、共シールや箱、ギャラリー資料の見方について、美術商の視点からわかりやすくご紹介します。

目次

アートの証明書とは何か

アート作品の証明書とは、その作品に関する情報を確認するための資料です。

たとえば、次のようなものがあります。

・作品証明書
・販売証明書
・鑑定書
・保証書
・エディション証明書
・ギャラリー発行の書類
・作家や工房による証明書

これらの書類には、作家名、作品名、制作年、技法、サイズ、エディション番号、販売元などが記載されていることがあります。

証明書があると、将来的な査定や売却、相続、作品整理の際に、作品情報を確認しやすくなります。

ただし、証明書にもいろいろな種類があります。

作家本人や公的な鑑定機関が発行したものもあれば、ギャラリーや販売店が販売時に発行したものもあります。
そのため、「証明書がある」というだけで判断するのではなく、誰が発行したものなのか、どのような内容が書かれているのかを確認することが大切です。

「本物」とは、必ずしも一点物という意味ではない

美術品の相談でよくあるのが、「これは本物ですか?」という質問です。

ここでまず整理したいのは、アートにおける「本物」という言葉です。

一般的には、本物というと、作家が直接描いた一点物の原画を想像される方が多いかもしれません。

もちろん、油彩、日本画、水彩、ドローイングなど、作家が直接制作した一点物の作品は、本物の作品です。

ただし、美術の世界では、それだけが本物というわけではありません。

たとえば、作家が制作に関わった版画、写真作品、立体作品、エディション作品などは、複数存在していても、正規の作品として扱われることがあります。

つまり、次の2つは分けて考える必要があります。

・本物かどうか
・一点物かどうか

本物の作品であっても、原画ではなく、版画やエディション作品として複数制作されている場合があります。

版画やエディション作品は「複製」とは少し違う

版画やエディション作品は、一般の方にとって少し分かりにくい分野です。

「同じ絵が何枚もあるなら、複製ではないのですか?」
と思われるかもしれません。

しかし、美術市場では、作家が制作に関わったオリジナル版画や、限定部数で制作されたエディション作品は、正規の作品として扱われます。

たとえば、リトグラフ、シルクスクリーン、銅版画、木版画、写真作品などには、エディション番号が付いていることがあります。

「10/50」のように書かれていれば、50部制作されたうちの10番目という意味です。

また、作家のサインが入っていたり、工房や出版社の証明が付いていたりする場合もあります。

このような作品は、一点物の原画とは異なりますが、単なる印刷物とも違います。

作家の制作意図、技法、エディション、サイン、出版元、保存状態などによって、美術市場で評価されることがあります。

複製画・ポスター・工芸印刷の場合

一方で、複製画、ポスター、工芸印刷などは、オリジナル作品や作家が関わった版画とは評価の見方が異なることがあります。

複製画やポスターが悪いという意味ではありません。

好きな作品を楽しむために飾るものとしては、とても魅力があります。
インテリアとして飾りやすく、価格も比較的手に取りやすいものが多くあります。

ただし、査定や売却を考える場合には、原画やオリジナル版画と同じ評価になるとは限りません。

大切なのは、それが何なのかを正しく知ることです。

・作家が直接描いた原画なのか
・作家が制作に関わった版画なのか
・限定エディションの作品なのか
・複製画やポスターなのか
・工芸印刷なのか

この違いによって、市場での見方は変わります。

「本物か偽物か」という二択だけではなく、「どの種類の作品なのか」を確認することが大切です。

証明書がないと価値がないのか

証明書がないと、すぐに価値がないのでしょうか。

答えは、必ずしもそうではありません。

日本のギャラリーや百貨店で販売された作品の場合、紙の作品証明書が必ず発行されるとは限りません。

特に、昔に購入された作品や、日本画、洋画、版画、工芸作品などでは、証明書ではなく、箱、作品裏、額裏、ギャラリーシール、百貨店シール、作品リスト、領収書などが確認資料になっていることがあります。

そのため、証明書がないからといって、すぐに「価値がない」「偽物だ」と判断する必要はありません。

ただし、作家や作品の種類によっては、証明書や鑑定書が非常に重要になる場合もあります。

たとえば、流通量が多い作家、贋作が多い作家、高額で取引される作家、特定の鑑定機関による鑑定が重視される作家などでは、証明書や鑑定書の有無が査定に大きく関わることがあります。

証明書がない場合は、作品本体、箱、裏面、シール、購入資料、来歴などをあわせて確認することが大切です。

共シールとは何か

日本の美術品で大切になることがあるのが、共シールです。

共シールとは、作品裏、額裏、箱などに貼られたシールのことで、作品と一緒に付属している情報ラベルのようなものです。

そこには、作家名、作品名、技法、サイズ、ギャラリー名、百貨店名、展覧会名、管理番号などが記載されている場合があります。

とくに日本では、紙の証明書が発行されず、作品裏や箱に貼られた共シール、ギャラリーシールが大切な資料になっていることがあります。

そのため、共シールは剥がさず、そのまま残しておくのがおすすめです。

また、作品を移動したり、額装を変えたり、箱を整理したりする前に、スマートフォンなどで写真を撮っておくと安心です。

「古いシールだから剥がしてきれいにしたい」と思うかもしれませんが、美術品の場合、そのシールが来歴や購入経路を確認する手がかりになることがあります。

共シールやギャラリーシールは、作品と一緒に残しておきましょう。

作品裏・額裏・箱を見る

証明書がない場合でも、作品裏、額裏、箱を見ることで、情報が見つかることがあります。

確認したいのは、次のような部分です。

・作品の裏面
・額の裏
・箱の表面、内側、側面
・差し箱、合わせ箱
・黄袋や保護袋
・ギャラリーシール
・百貨店シール
・展覧会シール
・管理シール
・作家の署名や落款
・エディション番号

作品の裏面には、作家名、作品名、制作年、サイン、落款、ギャラリーシール、展覧会シールなどが残っていることがあります。

箱には、作家名や作品名、販売元、管理番号などが書かれていることがあります。

特に、箱や額裏の情報は見落とされやすい部分です。

作品を査定に出す前や、作品整理をする前には、作品本体だけでなく、箱や裏面も確認しておくとよいでしょう。

「本物かどうか」が不安なときによくある質問

Q. 作家名はわかりますが、証明書がありません。本物ではないのでしょうか?

A. 証明書がないからといって、すぐに本物ではない、価値がない、というわけではありません。日本のギャラリーや百貨店で販売された作品では、紙の作品証明書が発行されていないこともあります。その場合は、作品裏、額裏、箱、共シール、ギャラリーシール、領収書、作品リスト、購入時のやり取りなどが確認資料になることがあります。

Q. 版画なのか、複製画なのかわかりません。

A. 版画と複製画は、一般の方には見分けがつきにくいことがあります。作家が制作に関わったオリジナル版画や、サイン入りのエディション作品は、複数存在していても正規の作品として扱われることがあります。一方で、ポスターや工芸印刷、複製画の場合は、市場での評価が異なることがあります。

Q. 「本物」とは、原画のことだけを指すのでしょうか?

A. 本物という言葉は、必ずしも一点物の原画だけを指すわけではありません。作家が直接描いた油彩、日本画、水彩、ドローイングなどの原画はもちろん本物です。一方で、作家が制作に関わった版画や、サイン入りのエディション作品なども、複数存在していても正規の作品として扱われることがあります。

Q. サインが本物かどうか不安です。

A. サインだけで真贋を判断するのは難しい場合があります。サインの形だけでなく、作品の技法、制作年代、来歴、証明書、箱、共シール、購入先などを総合的に見る必要があります。高額で取引される作家や、贋作が多い作家の場合は、専門的な鑑定が必要になることもあります。

Q. 箱やシールがありますが、意味がわかりません。

A. 箱やシールは、作品を確認するうえで大切な手がかりになることがあります。作品裏、額裏、箱などに貼られた共シールやギャラリーシールには、作家名、作品名、技法、サイズ、販売元、管理番号などが書かれている場合があります。古いシールでも、剥がさずそのまま残しておくのがおすすめです。

Q. 相続で受け継いだ作品の詳細がわかりません。

A. 相続で受け継いだ作品は、購入時の資料が見つからないことも多くあります。その場合でも、作品本体、裏面、額裏、箱、共シール、領収書、展覧会資料、作家名のメモなどが残っていないか確認してみましょう。処分する前に、まずは写真を撮って美術商に相談すると安心です。

Q. 購入価格と現在価値は同じですか?

A. 購入価格と現在価値は、必ずしも同じではありません。作家の評価、市場動向、作品の内容、技法、サイズ、保存状態、来歴などによって、現在の評価は変わります。購入時より評価が上がる場合もあれば、下がる場合もあります。

Q. 何をそろえて相談すればよいですか?

A. 作品全体、サインや落款、作品裏、額裏、箱、共シール、ギャラリーシール、証明書、領収書、作品リストなどの写真があると、相談が進めやすくなります。本物か偽物かという一言だけでなく、「原画なのか」「版画なのか」「複製画なのか」「どのような資料が残っているのか」を整理することが大切です。

証明書がない場合でも、あわてる必要はありません。
作品本体だけでなく、箱、額裏、共シール、購入時の資料などをあわせて確認することで、見えてくることがあります。

買取井浦では、作品証明書の有無、共シールや箱の見方、版画と複製画の違い、相続作品の確認などについても、美術商の視点からご相談を承っております。

執筆・監修

井浦歳和 — 株式会社ロイドワークスギャラリー代表
WRITTEN & SUPERVISED BY
井浦 歳和 (いうら としかず)
株式会社ロイドワークスギャラリー 代表 / 美術商・画商
  • ▸ 2009年、東京都文京区湯島にてロイドワークスギャラリー創業
  • ▸ 美術品・絵画の買取/展示/査定/鑑定業務に30年以上従事
  • ▸ BSフジ「ブレイク前夜」プロデュース
  • ▸ 戦後洋画から近代日本画まで買取/査定実績多数
  • ▸ 油彩/パステル/リトグラフ/デッサン/陶板画まで幅広く対応

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