この記事では、山田正亮作品の市場傾向と査定ポイントを、美術商として実際に作品を確認する際の視点も交えながら整理しています。
油彩、紙に油彩、水彩、パステル、色鉛筆、ドローイング、静物画、Work B、Work C、Work D、Work E、Colorシリーズなど、作品形式や制作時期による違いをわかりやすく解説します。
山田正亮のプロフィール
山田正亮(やまだ まさあき、1929年〜2010年)は、東京に生まれた画家です。戦後日本の抽象絵画を考えるうえで重要な作家の一人で、静物画から出発し、のちにストライプや色面による抽象表現へと展開しました。
山田正亮の作品は、長い制作期間を通して、絵画そのものの構造を問い続けた点に特徴があります。初期の静物画、線や面による構成、ストライプ状の絵画、色彩を扱う作品群など、段階的に変化しながらも、画面を自律した絵画として成立させる探究が続いています。

『絵画との契約 山田正亮再考』 (松浦寿夫・中林和雄・沢山遼・林道郎 著、水声文庫、水声社)
特にストライプの作品は、山田正亮を代表するシリーズとして知られています。反復する線や色面は、一見単純に見えますが、色、幅、間隔、支持体、塗りの密度によって、絵画を見る経験そのものを静かに変化させます。
作風と代表的な作品テーマ
山田正亮の作品は、具象から抽象へと移行しながら、絵画の構造そのものを追求した点に特徴があります。初期には静物画を描き、その後、線、面、格子、ストライプ、色彩の反復へと展開していきました。
代表的な作品群には、Still Life、Work B、Work C、Work D、Work E、Colorシリーズなどがあります。作品名に記号や番号が付されることが多く、タイトルだけでなく、制作年やシリーズ名をあわせて確認することが重要です。
1950年代のWork BやStill Lifeでは、静物や構成的な画面から抽象へ向かう過程が見られます。1960年代のWork Cでは、山田正亮を象徴するストライプ状の画面が重要な位置を占め、市場でも注目されやすい分野です。
1970年代以降のWork DやWork Eでは、反復する色面や線の構造がさらに展開されます。1980年代の紙作品では、水彩、パステル、色鉛筆、油彩などを用いた作品も見られ、キャンバス作品とは別の評価軸で扱われます。
1990年代以降のColorシリーズでは、色彩そのものに焦点を当てた作品が多く見られます。油彩のキャンバス作品と紙の水彩作品では市場での見られ方が異なるため、作品形式の確認が欠かせません。
山田正亮作品の市場での見られ方
山田正亮作品の市場では、制作年代とシリーズによって評価が大きく分かれます。特に、1950年代後半から1960年代のWork B、Work C系の油彩作品や紙に油彩の作品は、注目度が高い傾向があります。

画面全体が、不規則な格子模様(グリッド)やモザイクのように分割されているのが特徴です。
Work B.149
1957-58
引用元:国立近代美術館:https://www.momat.go.jp/collection/o01273

画面の端から端まで、水平または垂直の線(ストライプ)だけで構成された非常にシンプルな絵です。
引用元:国立近代美術館:https://www.momat.go.jp/collection/
データを見ると、1960年代のキャンバスに油彩作品では、数十万円台から100万円を超える取引例が見られます。小品であっても、制作年やシリーズが明確で、裏面サインや年記が確認できる作品では評価が伸びることがあります。
特にWork C系の作品は、山田正亮の抽象表現を考えるうえで重要な位置にあります。1960年代前半から中盤のキャンバス作品や紙に油彩の作品では、エスティメートを上回る落札例もあり、市場で強く見られやすい分野です。
一方で、重要な年代やシリーズの作品であっても、必ず落札されるわけではありません。エスティメートが高めに設定された作品や、状態面に注意点がある作品、買い手の判断が分かれやすい作品では、市場で慎重な選別が働くことがあります。
1970年代のWork D系作品は、サイズや来歴、文献掲載の有無によって評価が変わります。大作で、作品集掲載や展覧会歴、カサハラ画廊などの来歴が確認できる作品では、100万円を超える価格帯で評価される例があります。
1980年代以降のWork E系や紙作品では、水彩、パステル、油彩、色鉛筆などの技法が見られます。これらはキャンバスの油彩作品とは別の価格帯で見られることが多く、概ね十数万円から数十万円台で取引される例があります。

引用元:https://www.momat.go.jp/collection/o00907
Colorシリーズは、1990年代後半から2000年代にかけての作品として見られます。キャンバスに油彩のColor作品と、紙に水彩のColor作品では評価の見方が異なり、サイズ、状態、画廊シール、文献掲載の有無が確認ポイントになります。
市場で高く伸びる作品には、制作年が明確であること、シリーズ名や作品番号が確認できること、キャンバス裏や紙裏にサイン・年記・タイトルがあること、カサハラ画廊や佐谷画廊などのシールがあること、展覧会歴や文献掲載が確認できることが重なっています。
山田正亮作品は、戦後日本の抽象絵画として評価が高い一方で、作家名だけで一律に判断できる市場ではありません。Still Life、Work B、Work C、Work D、Work E、Colorなど、どの時期・シリーズの作品かを見極めることが大切です。
山田正亮作品の査定で確認したいポイント
山田正亮作品を査定する際は、まず制作年代とシリーズを確認します。1950年代のStill LifeやWork B、1960年代のWork C、1970年代のWork D、1980年代以降のWork E、1990年代以降のColorシリーズでは、市場での見られ方が異なります。
査定時に確認したい主なポイントは、次の通りです。
- 制作年代:1950年代、1960年代、1970年代、1980年代、1990年代以降のどの時期かを確認します
- シリーズ:Still Life、Work B、Work C、Work D、Work E、Colorシリーズなどを確認します
- 技法:キャンバスに油彩、紙に油彩、水彩、パステル、色鉛筆、コンテ、オイルパステルなど
- サイズ:F3、F4、F8、M10、F15、F20、P30、F50、S60など、号数や実寸を確認します
- サイン・裏面記載:画面上のサイン、キャンバス裏、紙裏、木枠、額裏のサイン、年記、タイトルを確認します
- 来歴資料:カサハラ画廊、佐谷画廊、南天子画廊、gallery yamaguchiなどのシールを確認します
- 文献・展覧会歴:作品集掲載、個展出品、展覧会図録掲載、旧蔵情報などを確認します
- 保存状態:ヤケ、シミ、ヒビ、絵具の浮き、剥落、絵具の縮み、波打ち、貼付、裏打ち、ピンホールなどを確認します
山田正亮作品は、戦後日本の抽象絵画として高く評価される一方、シリーズや制作年代によって市場の見方が大きく変わります。査定では、制作年、シリーズ、技法、サイズ、サイン、裏面記載、来歴、文献掲載、保存状態を整理し、作品ごとの位置づけを確認していきます。
執筆・監修
- ▸ 2009年、東京都文京区湯島にてロイドワークスギャラリー創業
- ▸ 美術品・絵画の買取/展示/査定/鑑定業務に30年以上従事
- ▸ BSフジ「ブレイク前夜」プロデュース
- ▸ 戦後洋画から近代日本画まで買取/査定実績多数
- ▸ 油彩/パステル/リトグラフ/デッサン/陶板画まで幅広く対応
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